なんとなくサンネット日記

2011年4月9日

季節のなかを走る

Filed under: つぶやき — toshio @ 1:10 PM
安方の自由ネコ

横丁の春

先週、東奥日報に「ザーズ(ZAZ)」という女性歌手について、小さな記事が載りました。

――昭和の場末の酒場を思わせるような郷愁あふれる伴奏に乗せるクールでハスキーな歌声。フランス語圏を中心に人気を集め、“エディット・ピアフの再来”とも称される女性歌手…

――1980年フランス生まれ。2006年ごろからモンマルトルの路上で歌っていたが、09年にパリのオランピア劇場で開かれた新人発掘オーディションで圧倒的な歌唱力を披露して優勝。デビューアルバムは昨年、フランスでヒットした。古さと新しさが同居する不思議な雰囲気を漂わせるオリジナル曲…シャンソンやジプシー音楽の風味漂うアコースティックな演奏も格好いい…――

音楽を聴く前に、記事だけでひかれました。「エディット・ピアフの再来」「モンマルトルのストリートミュージシャン」「ジプシー音楽の風味」…この辺が大いに気になったのです。

月曜日まで待って、いそいそと成田本店に彼女のデビューアルバム『モンマルトルからのラブレター』を注文しました。
水曜日には届いたので、それから聴いています。それが期待通り、いいのです。

アルバムの1曲目は「通行人」。ストリート・ミュージックを聞いているようなシンプルさ。デジタル技術はあっさりしています。でも、聴いていると、まるで映画の予告でも見ているように、どんどん胸が高鳴ってきます。

CDの歌詞カードに、渡辺芳也という人がザーズの紹介を次のように書いていました。
――1曲目の“Les passants”(通行人)は出だしは物悲しく始まり、明るい曲へと展開していく。もしかしたら、それは幼少時の頃の音楽学校での孤独さから歌手としてデビューするまでを語っているのかもしれない――。

人々が通り過ぎて行く
彼らを見ながら
考えごとをして時を過ごす私
足早に歩いている彼らの
傷ついた体から
その過ぎ去った日々が見えてくる
のんきな足取りなのに…

過ぎて 過ぎて 過ぎていくわ
最後の人が残るはず…

歌い始めには、確かに、孤独と距離、若い猜疑心と軽やかな反抗が入り混じっています。次第に、テンポが速く、明るくなります。そして歌はエンドに…。

季節のなかを 私は表現することに突進する
そのたびに抱く衝動は
触れなかったことを表現させたい気にさせる
活気のない貧しい暮らしのなかで
正義が行われますように

過ぎて 過ぎて 過ぎていくわ
最後の人が残るはず…

最初、路傍にいるかのような彼女でしたが、それは町の空高くに伸びて、さらに上空、創造の空間を飛んでいきました。

――彼女は様々なところで歌い続ける。スペインとの国境の町アンダイエのスタジアムで1万人を前に、カサブランカでチリ人たちとのジャム・セッション、コロンビアの岩塩坑での無料ライブ、ロシアのシャンソン・ツアー…

――インタビューで、司会者に「あなたは何を望むの」と聞かれ、彼女は「私は自分の歌で世界が良い方向に変わることを望む」と言っていた――(渡辺芳也)

彼女は世界のどこに行こうとも、古く猥雑で、庶民の生活がにじみ出るモンマルトル町のストリートミュージシャンなのでしょう。

私たちが日々行う小さな営み。泣き、笑い、語りあうもろもろ。それらが、世界を良いう方向に変えるように、彼女は願っているようです。 手紙を書く、夕食をつくる、朝すれ違う人とあいさつをする、公園を散歩する。その一つ一つに祈りをこめて…。

自分の世界と現実世界との間に壁をつくらず、それをつらぬいて、表現する。こんな若いアーティストが生まれていることを知って、ほんとうに励まされました。 皆さんも、ぜひ、お聴きください!

(※フランス音楽専門のブログ「Musique Francaise」に紹介があります。)
http://blog.livedoor.jp/f_music/archives/51465283.html

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