なんとなくサンネット日記(個人ブログ) としおのつぶやき

2009年7月11日

ミラーニューロンは何を教えてくれる?

Filed under: つぶやき — toshio @ 11:53 AM
土曜のベンチ

土曜のベンチ

イタリアの神経生理学者リゾラッティのチームが、サルの前頭葉の神経細胞を調べていました。1990年代の初めのことです。

実験中のサルのある神経細胞が活発に活動すると、「バリバリ」という音が鳴って、研究者に分かるようにしていました。脳内の電気活動を音に変換していたのです。

さて、休み時間になり、研究者は「ジュラート」というイタリアのアイスミルク、シャーベットを、食べます。すると、ジュラートを手に持ち、口に運ぶたびに「バリバリ」という音が聞こえたのです。

もともとは、サル自身がエサを手に持って口に運ぶときに活動する神経細胞、ニューロンを調べていました。自分が運動するときに活動するニューロンなのに、他人(実験している研究者)の行動を見ただけで活動したのです。

これが「ミラーニューロン」(鏡の神経細胞)の発見でした。

これは、ある神経細胞は、自分に対しても他人に対しても同じように、ある行動に向けて働くということです。

考えるとか、理解するとか、そういう複雑な脳の働きではなくて、見て、たちどころに、自分が行動するときと同じく神経が働くのです。これは、考えるほどに、とても不思議だなと思います。

「見る」、「ある行動の意味」、「自分の行動」。それらがワンセットになって、神経活動レベルに埋め込まれているのですから…。

あくびをすると、他の人にも「伝染」する。通りすがりに聞いた鼻歌を、いつの間にか歌っていた。そんなことにもミラーニューロンが働いているのかもしれません。

私たち、少なくともサルと人間は、どうしても社会的な存在なのでしょう。目に見えるところに他者がいてほしいし、そして他者に見せるために自分がここにいるのかもしれません。まるで、他者と自分は、自分のなかの神経細胞でつながっているようです。

いま、人間関係がたいへんむずかしい時代です。他者の存在それ自身が恐怖の対象になり、人をモノのようにみなしたりします。人と人の距離はだんだん広がっているようです。信じがたい犯罪があり、おかしな風潮が広がります。

それでも、ミラーニューロンという存在が、人は、生理的に、神経細胞レベルで、共感する他者を求めていると言っているかのようです。

だからこそ、人が人を求める欲求は時代を超えて切実なのでしょう。

『ミラーニューロン』.ジャコモ・リゾラッティ&コラド・シニガリア.柴田裕之訳.紀伊国屋書店.2009年)

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