なんとなくサンネット日記

2012年8月10日

感傷をふくまない心

Filed under: サンネットの仕事とは — 投稿者 @ 7:28 PM

宅配が終わって

 政治哲学者のハンナ・アーレントが、友人たちにどのような資質を求めていたか。それを弟子のヤング・ブルーエルが、素敵な文章で表現しています。(『なぜアーレントが重要なのか』、2006年、矢野久美子訳、みすず書房、2008年、P21-22) 

 

(私が友人に求めたこと)それは、世界――身近な社会と同時に大きな政治的世界との両方――を観察し判断する情熱であり、感情であり、感傷をふくまない「心」であった。また、偽善的な言葉のない知性であり、自由に広がる才気であり、他者の意見に対して役立とうとする態度であった。それから誠実さと、さらには伝統的な家族や共同体や宗教的環境をもたない人びとにとって友情がいかに安らぎをもたらすかということへの理解力であった。

 

 読んでいると、心がふるえ、奥底からせつない気分がわいてきます。でも、とてもいい感じです。

 身近な関係と大きな政治的世界をむすびつける観察力、情熱。きっと、大きな世界から本当の自分を隠さないで、世界に自分を押し出しているということでしょう。情熱はあるけど、感傷は含まない…これは自己憐憫ときちんと対峙するということですね。

 「偽善的な言葉のない知性」。これもいいですね。「他者の意見に対して役立とうとする態度」。これにはまいってしまいます。

 そのあとに続く行は、世界観を表現しているかのようです。「伝統的な家族や共同体や宗教的環境をもたない人びと」とは、少数派の人びとです。既成のコミュニティには落ち着けない、あるいは疎外を感じている人たち。その人びとにとって「友情」がいかに必要かを、理解する能力…。む~。これは連帯、共感などの言葉の新しい定義かもしれません。

 友人になる、同志となるのではなくて(ましてメールアドレスを交換したなどということでもなく)、その人々が友情をいかに必要としているのか、いかに安らぎが人の生存にとってだいじなことかを「理解できる力」…ほんとうにこの力が大切です。

 こんな言葉に出会うとほっとします。そして、明日もがんばろうかな、という気分になります。アーレントとブルーエルにありがとう!

コメントはまだありません

No comments yet.

RSS feed for comments on this post.

Sorry, the comment form is closed at this time.

Powered by WordPress