なんとなくサンネット日記

2011年6月25日

遊ぶアリ、だましアリ

Filed under: つぶやき — 投稿者 @ 2:32 PM
夏が近づく

夏が近づく

 イソップ物語の「アリとキリギリス」。アリは働き者のシンボルです。

 だけど、サンネットの仲間に「働かないアリ」こだわってきた人がいます。

 それは、狭間英行さん。

 彼は6年前から折にふれ、このテーマをめぐって、発言を繰り返していました。

 「浦河べてるの家」関係の本で、「働かないアリ」の役割を知っていたからです。

 彼のテーマは、競いあわない、助け合う、毎日が楽しい暮らしをめざそう、です。

 否定形の「働かないアリ」という言葉が、どこかぴんと来なかったそうです。それで、最近は「遊ぶアリ」という言葉をあみだして、使っています。

 遊ぶアリ…不思議な言葉だなあと私は思いました。でも、それはアリ社会の実態に近いようです。

 『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐、メディアファクトリー新書、2010年)という本を読みました。本の帯のコピーにはこうあります。

 「7割は休んでいて、1割は一生働かない」「巣から追い出されるハチ、敵前逃亡する兵隊アリなど『ダメな虫』がもたらす意外な効果」。会社社会を見直したいという人に、読まれているそうです。

 中身には、次のことが書かれていました。

 アリの巣(コロニー)のなかを、ある瞬間、観察すると(どうするのかわかりませんが)、だいたい7割くらいのアリは何もしていない。

 シワクシケアリを1ヶ月観察しても、アリの2割は働いているとはいえない。トゲオオハリアリの一生を観察するとずっと働いていないアリがいる…。「働き度、働き始める程度」にかなりの個体差があるということです。まめなアリ、鈍感なアリ、中程度のアリ…というふうに。

 なぜ働き方に個体差があるのでしょう。たとえばこのようなことがあるというのです。

 ハチにとって、巣が暑くなることはよくありません。暑くなりすぎると幼虫が死んでしまうからです。そこで、冷やすため、ハチは羽を振って巣の中に風を送ります。このようなとき、個体差があることが役立っているのです。もし個体差がなければ、一気に全部のハチが行動してしまいます。そして全部が一度に疲れてしまいます。効率的ではありません。

 個体差があるから、やや暑いときに敏感なハチから羽を震わせ、もっと暑くなれば鈍感ハチも応援に駆けつける。このような方法で、外界の刺激(気温の高まり)にたいして、総体としての行動程度を決定し、タイムリーな対応をとっているのです。 

 アリがエサをみつけて、巣まで運びます。往復するうちにルートが決まります。でも、決まったものが最短とは限りません。U字型になっているかもしれません。上から見れば迂遠なルートです。

 コースを律義になぞるアリばかりであれば、コースは変更されません。しかし、うっかり間違えて、横道に入ってしまうアリがいるから、たまたまU字型を横切り、最短コースを見つけるかもしれないのです。

 「働かないアリ」は、リリーフ要員であり、危機に対応し、創作活動も行っているのです。「働かないアリ」という言い方は実際よりも消極的すぎて、狭間さんのいうとおり「遊ぶアリ」という表現のほうがぴったりなのでしょう。

 社会性昆虫のアリは利他的で、自分たちの社会が存続・維持するように行動しています。「働かないアリ」や「遊ぶアリ」は、目の前の効率だけを考えると怠けているようですが、長期的に考えればとても意義があるのですね。

 その一方、どのような社会にも、自分が所属する社会に貢献することから目をそらし、タダ乗りする輩がいます。

 アミメアリには女王アリはいません。すべてのアリが交尾なしで娘を生産し、コロニーを維持しています。アミメアリは複眼しかなく、単眼はないのですが、単眼があってやや体の大きなアミメアリがいます。調べてみると複眼型と単眼型には遺伝的な違いがあるのです。単眼型はコロニー全体の利益になることは一切せず、ひたすら自分の子どもだけを生産します。

 複眼型アミメアリは、単眼型が仲間だと思い、コロニーで生活を共にします。複眼型はコロニーを維持する仕事をし、卵の世話をしますが、単眼アミメアリは自分の卵をたくさん生むだけです。

 「単眼型の正体は社会が維持されてきたところに現れた利己的な裏切り者だと判断できます。生物学上、こうしたコロニ―内の裏切り者は英語の『だます(cheat)者』の意から「チーター」と呼ばれます」(p116)

 このようなチーターは社会があればどこにも現れるもので、なんと粘菌にすらあるそうです。 

 騙し、出し抜いて、タダ乗りする裏切り者…こういう存在は、精神性の問題ではなくて、えらく原始的な必然性から生まれているのでしょう。

 「働かないアリ」「遊ぶアリ」は働かないように見えるけど、長期的な視野に立った忠誠心があるのです。チーターはたくさん卵を産むので一見、働き者のように見えるかもしれないけど、コロニーに忠誠は誓わない、裏切り者なのです…。なにか、どこにもありそうな話です。

 いよいよ遊ぶアリには大きな意義がありますね、狭間さん!

コメントはまだありません »

No comments yet.

RSS feed for comments on this post. TrackBack URL

Leave a comment

CAPTCHA


Powered by WordPress