
力を合わせる
年の瀬もおしつまりました。
今年もいろいろな人と出会い、さまざまなことがありました。
よかったことのひとつは、DVD『癒しの家(Healig Homes)』を知ったことですね。このDVDは、アメリカの心理療法家ダニエル・マックラーが、取材・制作したドキュメント。スウェーデンのファミリー・ケア財団の活動実践を紹介しています(字幕日本語訳:鶴田みさ)。
(ダニエル・マックラーのHP)http://wildtruth.net/dvdsub/ja/%E7%99%92%E3%81%97%E3%81%AE%E5%AE%B6/
精神科治療でうまくいかなかった人たちが、農家で1,2年過ごし、そこでの回復をうながすプロジェクトです。農家の家族と暮らし、仕事をする。そのなかで回復していくというのです。
受け入れる農家は「ホスト・ファミリー」と呼ばれ、財団の心理治療者たちは彼らを支えます。また、精神保健に問題をかかえた人にも心理療法を行うそうです。ただ、療法というと「白衣を着て、面接室で」というイメージがありますが、まったくそうではないようです。もっと人間的というか、普通っぽいというか…。
先駆的なプロジェクトですので、利用している人、受け入れ側の農家の家族、治療者たち、それぞれ魅力的。でも、やはり主人公は、農家と利用者。彼らが主人公でありえるようにしつらえている治療者たち、という関係になっているようです。いい関係です。
DVDには7,8人の治療者たちが出てきます(なぜか、みな40代から50代あるいはそれ以上?なのが不思議ですが)。その治療者たちの言葉には考えさせられました。以下、そのいくつかをひろってみました。
ヨアキム(男性)「(治療チームは)お互いを信頼し合っている。お互い怒鳴りあうことができる。それから『私の意見に同意して!』と率直に言える。
そうすることは、そんなに大変じゃない。私たちが会う人々(クライアント)もそれを感じると思うんだ。そういうことを言っていい(治療―被治療関係の)文化を作っているんだ」
マリア(女性)「自分は(クライアントより)重要ではないように、権威的にならないようにしているわ。こうは言うわ。『これは私は大切だと思うし、こういうことは信じているの』。その人にとってのベストな考え方を見つけられるようにするの。
『私の話をきかなくてもいいのよ、リラックスして』って言うわ。私の言うことが何か面白かったら、それが届いていっしょに話せるようにって思うの」
テオ(男性)「人々(クライアント)は問題があってここに来る。レッテルと診断つきで。そんなの(診断名は)何とも思わない。他の人たちがどう言うかも。
人々に会う会い方がある。レッテルや診断なしで。ただ会うだけ。何をもってきたのか、何が欲しいのか。それが敬意というものでしょう。」
ボス(男性)「精神病の経験のある人なら、自分のために誰かが時間をとって、座って、言うことを分かろうとしてくれているのが。きっと好きだと思う。どこかの部屋に置き去りにするのではなく、薬ですべて取り去るのはなくてね。
人間の問題はバラバラの入れ物に入っているのではなく、数直線の上にあると思うんだ。みんな、そのどこかにのっているとね。ぼくたちみんな、この(数直線の)つながりが欲しい。みんな、聞いてほしいし、見てもらって、確認してほしい。みんなそうだと思う。
それが人間の基礎…いしずえだ。その上に(人間関係や回復を)建てていく。こうした経験のある人たちにそれをしないのは、ほんとうに馬鹿なことだと思うよ。馬鹿だよ。もっと必要としているんだ。この人たちは誰かを必要としている。彼らを見て「調子はどう?」って聞いてくれるのを。そして、彼らが聞こうとして、交流をもとうとすることを。」
カリーナ(女性)「人々(クライアント)が来たとき歓迎されていると感じて欲しいわ。誰でも仲間になりたいのよ。仲間に入るってことは、自分の中から何か示すことでもあるわ。(治療者が)それをしなかったら(クライアントは)仲間とは思えないでしょ。」
また来年、すてきな出会いがありますように!よろしくお願いいたします。