
雨上がり
人間がつくるネットワークにはいろいろなかたちがあるが、スモールワールド・ネットワークはその一つだ。
特徴は二つある。一つは、ネットワーク内のめざす相手に、少人数を経由しただけで到達できること。
ネットワーク内のメンバーは、大きな苦労をすることなく、望むことを望む人に伝えることができる。
二つ目は、ある友人の大半はたがいに友人であるという関係である。つまり、ミニ独裁者が支配するネットワークでも、官僚的なネットワークでもない。
雰囲気のいいクラブ的な、活気のある研究開発グループのようなネットワークである。
「スモール」というのは、この特徴を維持するには、おおよそ150人以下の規模にしなければならないことをさしている。スモールでなければならないのだ。しかし、このネットワークは、「新しいメンバーの多様性と古い関係の安定性をむすびつける最善のバランス」もち、活発な創作能力を発揮するという。
情報化社会、国際化、個性化などといいわれる現代だが、だからこそ、このスモールワールド・ネットワークの考えには大きな可能性がある。
このようなネットワーク、共同体、人の関係をイメージすることなく、情報化…などを語ることは誤った脇道に入り、「情報」の森にさ迷うことになるのではないだろうか。 (『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』ニコラス・A・クリスタキ、ジェイムズ・H・ファウラー、2009、講談社、鬼沢忍訳、2010年邦訳、P210など)